古書の価格

古書には三つの価格があります。 第一にお客様からの買い値、第二に古書市場での相場、第三にお客様への売り値です。 古物商はほかの商売とは違い、まだ商品ではないものを仕入れて、商品にして販売する生業です。 蔵書家の本棚に並んでいるとき、本はただの「本」です。 そして、古本屋が買い取り価格を付けて、はじめて「古本」になります。 古本屋に並んでいる「古本」がお客様のも のになったとき、「古本」はまた、ただの「本」に戻ります。 商品ではないものを商品にする古物商はたんなる流通業ではなく、生産的な機能ももっているのです。 そのため、そこにさまざまなコストも計上されます。 はじめからパッケージされ、伝票を付けて送られてくるほかの商品の仕 入れとは、その点が大きく異なっています。

お客様から仕入れて、市場に出すのがおもな仕事という古書店もあります。 お客様に売るのが一年二年という単位なのにくらべて、市場に出すほうは、はるかに早く売ることができます。 その代わりリスクも大きくて、出してみなければいくらになるかわかりません。 最低これ以下では 売らないという止め値は付けられますが、自分で売り値を決められるわけではないからです。 では市場に出品した場合、どのくらいの利ざやが稼げるのでしょうか。 出品したものをお客様からいくらで買い取ったかは、古書店にとって秘中の秘です。 売買が成立している以上、落札価格が 買った金額を超えていることはまちがいないのですが、それをいくらで仕入れたのかを明かす人はいません。 私の見立てでは、予想落札額の半分以上で買う人はいないのではないかと思います。 というのも、 市場の値段はそのときによって倍ぐらいの開きがあるからです。